レビー小体型認知症(Dementia with Lewy Bodies: DLB)は、アルツハイマー型認知症の次に頻度の多い認知症です。横浜市立大学名誉教授の小阪憲司先生が世界で初めて発表された認知症としても知られています。
DLB患者さんの脳の中には、レビー小体と言われる構造物が蓄積しています。レビー小体はαシヌクレインと言われタンパク質から構成されています。レビー小体はもともとは、パーキンソン病の患者さんの脳にたまることが知られていました。パーキンソン病の患者さんでは、レビー小体は脳幹に蓄積しますが、DLBの患者さんでは、レビー小体が脳全体にびまん性に蓄積しているという違いがあります。DLBも、パーキンソン病もレビー小体が悪さをしているという共通点があるため、合わせてレビー小体病という言い方をすることもあります。
DLBの特徴としては、認知症症状の他に、パーキンソン病の患者さんでみられる振戦、歩行障害、動作緩慢といったパーキンソニズム、繰り返し現れるリアルな幻視、症状の動揺性、そして、夜寝ているときに夢の内容にあわせて喋ったり体を動かしたりするレム睡眠行動障害があります。これらはDLBの中核症状と言われています。その他にも、向精神薬に対する過敏性、立ちくらみや便秘などの自律神経症状、うつや不安といった精神症状、嗅覚障害といった症状もDLBを示唆する症状と言われています。
DLBの患者さんの脳は、アルツハイマー型認知症の患者さんの脳と比べて比較的萎縮が軽度といわれています。パーキンソニズムを反映すると言われているドーパミントランスポーターシンチグラフィや、心臓の交感神経を反映する心筋交感神経シンチグラフィ検査が診断に有効です。また、脳血流SPECT検査や、FDG-PET検査でも、後頭葉の血流低下や、後部帯状回の血流/糖代謝低下が比較的軽度であるという特徴も診断に有効とされています。
DLBの患者さんを調べると、認知症症状の出現する数年前からレム睡眠行動障害、便秘、嗅覚障害が出現することがあると言われており、これらの症状はDLBの前駆症状として早期診断に有用であると考えられています。
DLBの治療としては、アルツハイマー型認知症にも使われているドネペジルが進行抑制には有効です。ただし、DLBの患者さんは薬物への過敏性を呈することがあるので、使用する場合は医師の指示に従ってください。
DLBの患者さんは、幻視や精神症状、睡眠障害、運動機能障害を呈するなど症状が多彩なので、介護負担が大きいです。また、薬物調整も難しいため、専門の医師の診察が必要になることも多いと思います。記憶障害は軽度であることも多いので、軽度の認知症の方では、幻視については、認知症の症状であることを説明することで安心感を持てることがあります。また、睡眠を十分に取ることで幻視が軽減したり、精神的に安定したりすることもあります。

認知症専門医 千葉悠平