認知症介護者のためのブログ

医師を含む複数の専門家による、認知症介護者へのメッセージ。 認知症に関する様々な情報を提供します。

2019年04月

高齢期の発達課題として、発達心理学者のエリクソンは、「統合と絶望」ということを挙げています。高齢期は、今までの人生の総まとめという時期です。長い人生の中で、今までしてきたこと、出会ってきた人、周りへの影響などについて振り返ることが、多くなると言われています。それは、高齢期特有の、退職、老化、病気、社会とのつながりの低下、死別といったイベントを通して、自分の人生と自分の死に直面化せざるを得ない状況となりやすいからです。自分の人生を、良い人生だった!と思えるのが、統合。そして、その逆が絶望です。

 

高齢者自身は、統合の達成を目指すこととなり、高齢者を支える側の人たちは、高齢者本人の統合をサポートするということになります。

 

高齢者と関わる時の一番大事な姿勢は、この関係性にあると思います。原則的には、支援者の立場としては、人生の大先輩としての高齢者の考え方、行動を受容し、肯定するという姿勢が大切になります。

これは、高齢者に、認知症があろうとなかろうと、関係のないことです。特に、認知症があるときは、高齢者本人が自分の人生を語れないことがありますから、高齢者と関係のある人たちから、その人の人生について聞くということも重要になります。目の前の高齢者を、人生の物語の主人公であると捉えることで、意思のある一人のかけがえのない人として扱うことにつながります。

 

個別のケースでは、それぞれ状況が違うと思いますが、軸となる基本姿勢を持つと、迷った時に、判断がつきやすくなると思います。

自分や家族から、記憶力がおちた、人の名前や、ものの名前が出てこない、ものを失くしてしまう、何度も同じものを買ってきてしまうなどといったことを経験するようになると、認知症かな?と気になりますか?いやいや、だれでも年をとると、物忘れは出てくるものだ、と気にしませんか?

 

年を取ることによって出てくる物忘れと、認知症によってでてくる物忘れは、区別されるものです。認知症によって生じている物忘れを放置してしまうと、徐々に進行して、物忘れ以外の困った症状が多く出てきます。

高齢期に気にしないといけないことは、認知症だけではありませんが、認知症は長く付き合っていかないといけない病気なので、認知症があるのとないのでは、生活の質が大きく変わってきます。

 

認知症の方、認知症介護に関わる方は、日本のみならず、世界中に多くいらっしゃると思います。日本では多くの書籍等が販売され、福祉サービスも多くなってきましたが、日本国外の日本人の方が、気軽に情報を得ることは、まだまだ難しいと思います。

 アメリカ、カリフォルニアで活動している、Rokuro.orghttps://www.rokuro.org/)では、在米日本人にむけて、認知症高齢者介護に関連する知識の提供を行っております。ここで行われた認知症、高齢者に関連する講演、知見について、共有をしていくこととなりました。

 

このブログでは、認知症について、以下のことを説明していこうと思います。

1、高齢期に気にしていく必要のある健康上の問題

2、認知症という病気について

3、認知症の診断のための検査について

4、認知症の進行抑制について

5、認知症の患者さん、家族のためのサポートについて

6、認知症の患者さんのケアのために気を付けること

7、認知症の患者さん、家族が気を付けるお金の話

8、認知症にともなう、心理的行動的な問題症状について

9、認知症に伴う、運動機能の障害について

10、認知症に伴う、嚥下機能の障害について

11、認知症の予後、終末期について

 

認知症について理解を深めることで、高齢期を積極的に、アクティブに過ごすことや、自分や家族の人生のまとめを作ることに取り組むためのヒントが多くあると思います。全部を読むことは難しいにしても、必要なところを読んだり、大事なところを目を通してもらって、在米介護、長距離介護などをされている方にお役に立てればと思います。

 

 

精神科医 認知症専門医  千葉悠平


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