認知症介護者のためのブログ

医師を含む複数の専門家による、認知症介護者へのメッセージ。 認知症に関する様々な情報を提供します。

現在日本には、約460万人(2015年の調査)の認知症患者がいると言われています。

また、世界では、約4600万人(2015年)の認知症患者がいると言われています。

世界的に、認知症患者の数が増えていて、これは、高齢化、長寿命化の影響が一番大きいと言われています。

認知症になると、物忘れや、運転などの操作ができない、身の回りのことができない、といったことが数ヶ月~数年の経過でゆっくりと、目立ってきます。また、進行してしまうと、転びやすくなったり、たべものが喉に使えたりするなど、生活に注意が必要になり、介護も必要になってきます。

 

認知症の定義は、

一旦正常に認知機能が発達した人が、なんらかの後天的な理由によって、認知機能障害を呈するようになり、日常生活に困難をきたすようになった状態。と言われています。

 

分解すると

    一旦正常に発達 ・・・ 人生のある時期では、日常生活を送る上でサポートなしで過ごせた。

    認知機能障害を呈している・・・よかった時と比べて認知機能の低下が見られている。

    日常生活に支障をきたすようになった状態・・・一人暮らしは困難

 

3つの要件が揃うと認知症と診断されます。

 

認知症という診断名は状態を示しているにすぎません。

この①〜③の状態については、みじかな人の方がよくわかっていると思いますし、このような状況があれば、認知症が強く疑われますので、かかりつけ医や、認知症を専門にしている医師の診察を一度は受けた方が良いです。

 

認知症、認知機能障害が生じている原因を含めて診断するためには、さらに詳細な診察や検査が必要なことがあります。例えば、アルツハイマー型の認知症、レビー小体型の認知症など、認知症の中にも、いろいろなタイプがあり、それぞれ対応や予後、薬物療法、気をつけるポイントが違ってきます。

 

ちなみに、上の①②はあるけれど、③とまでは言えない、という方でも、不安であれば、物忘れ外来の受診は可能です。医学の進歩もあり、詳細な診察、MRIや、核医学的検査などで、認知症の手前の段階でも、認知症のタイプを診断することもある程度可能となってきています。正常老化との区別もできます。また、実際、受診することで、今までの生活習慣を振り返ったり、今後気をつけたりすることや、今後に向けた生活の準備をする機会になります。

 

 

認知症専門医 千葉悠平


老化とは何でしょうか。

高齢になれば、だれでも、物忘れは出てきます。なれていないこと、しばらくぶりの人の名前や顔が思い浮かばないことも、必ずしも異常とは言えません。

一般的に、高齢になると、意欲の低下、感情の起伏、集中力、理解力の低下などがある程度出てくることが普通です。さらに、仕事や役割が少なくなるために、外出の頻度、活動量の低下がみられます。高血圧、脂質異常症といった生活習慣病や、関節痛などの整形外科的な疾患も含めて、いくつかの持病があることも普通に見られます。

 

高齢期にみられるこのような生理的変化の背景として、脳神経にはどのような変化が起きているのでしょうか。老化した脳は、正常の脳と比べて、びまん性の軽度の脳萎縮がみられ、顕微鏡で詳しく見ると、びまん性老人斑と言われる変化がみられます。これは、アミロイドと言われるタンパク質から構成されている、老化の変化です。老人斑は、アルツハイマー型認知症の脳変化としても、出現してくるものです。(詳しくは難しいのですが、興味のある方は、http://dementia.umin.jp/link4-3.html

 

アミロイドは、毎日起きているときに脳内に増えて、睡眠の後に、量が減ることが知られています。最近の報告では、脳内のリンパ系といわれる、グリンパティックシステムと言われる機序によって、睡眠中に脳内の掃除が行われている可能性が示唆されています。グリンパティックシステムの詳細や、アミロイドの出現の原因は、まだ詳しくはわかっていませんが、今後の研究が期待されます。(https://www-karger-com.laneproxy.stanford.edu/Article/FullText/490349

 

 

生理的な脳の中では、長年かけて老化に伴う変化が起きています。そのために、老化に伴った精神、認知、運動機能の変化が出てくると言われています。

 
認知症専門医 千葉悠平

高齢期の発達課題として、発達心理学者のエリクソンは、「統合と絶望」ということを挙げています。高齢期は、今までの人生の総まとめという時期です。長い人生の中で、今までしてきたこと、出会ってきた人、周りへの影響などについて振り返ることが、多くなると言われています。それは、高齢期特有の、退職、老化、病気、社会とのつながりの低下、死別といったイベントを通して、自分の人生と自分の死に直面化せざるを得ない状況となりやすいからです。自分の人生を、良い人生だった!と思えるのが、統合。そして、その逆が絶望です。

 

高齢者自身は、統合の達成を目指すこととなり、高齢者を支える側の人たちは、高齢者本人の統合をサポートするということになります。

 

高齢者と関わる時の一番大事な姿勢は、この関係性にあると思います。原則的には、支援者の立場としては、人生の大先輩としての高齢者の考え方、行動を受容し、肯定するという姿勢が大切になります。

これは、高齢者に、認知症があろうとなかろうと、関係のないことです。特に、認知症があるときは、高齢者本人が自分の人生を語れないことがありますから、高齢者と関係のある人たちから、その人の人生について聞くということも重要になります。目の前の高齢者を、人生の物語の主人公であると捉えることで、意思のある一人のかけがえのない人として扱うことにつながります。

 

個別のケースでは、それぞれ状況が違うと思いますが、軸となる基本姿勢を持つと、迷った時に、判断がつきやすくなると思います。

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